車内マナーと鉄道会社・乗務員の対応への疑問 | 専門分野と弁護士費用の疑問に答えます
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車内マナーと鉄道会社・乗務員の対応への疑問

 先日,平日午後7時ころの帰宅ラッシュ時にJR高崎線下り(高崎方面行き)電車のグリーン車に乗ったときのこと。50代くらいの男女2人組が,2席1組の座席を後ろ向きに回転させ,計4席の座席を向い合せにして,うち2席には大きな荷物を置いて,4席を占領していました。グリーン車内は満席で,座席に座れず立っている乗客が複数いるにもかかわらずです。

鉄道会社は何らかの対応をすべき

 グリーン車内では乗務員が乗客のグリーン券を確認するために定期的に巡回しているので,乗務員が巡回に来てその2人に注意することを期待していましたが,新橋駅(私が乗車した駅)から上野駅までの間,乗務員は一度も巡回して来ず,結局,その2人は何の注意も受けないまま上野駅で降りました(そんな2人が後ろ向きに回転させた座席を元に戻さなかったことは言うまでもありません)。新橋駅・上野駅間は乗降客が多いので,普段であれば,グリーン券を確認するため一度は乗務員が巡回してきますが,何故かそのときに限って巡回に来なかったというのは何とも不思議です。乗務員がその2人を「めんどくさい客」だと思って,あえて巡回に来るのを避けたのではないかとさえ思えてしまいます。

 その2人がどこから乗車したのかは分かりませんが,その2人が乗車している間(新橋駅到着までに),一度は乗務員が巡回に来ているはずです。新橋駅までは満席でありませんでしたが,空席も数少なく,東京駅(新橋駅の次)で満席になって座れない乗客が出ることは明らかでした。そのような状況であった以上,乗務員は,新橋駅手前で巡回に来たときに満席でなかったとしても,その2人に対して,荷物を除けて2席を空けるよう注意すべきです。実際上その荷物は相当な大きさでしたので,座席脇や膝の上に置くことは不可能でしょうが,そうであれば,その2人には,グリーン車から降りてもらうか,他の乗客の邪魔にならない場所に立っていてもらうかすべきであったと思います。なお,JR東日本の旅客営業規則では,3辺の和が250㎝以内で,かつ,重量が30㎏以内のものを無料で2個まで車内に持ち込めるとされていますが(同規則308条1項),おそらくこれは普通車両を想定した規則で,グリーン車で,ましてや他の座席まで占領して荷物を持ち込むことは許されていないと思います(普通車両でも,混雑状況などを見て,他の乗客に迷惑が掛かるような場合には,このような大きな荷物を持ち込まないというのが常識であると思います)。

 この件では,乗務員がその2人に注意しなかったこと,あるいは,満席が予想されるときに巡回に来なかったことが一番の問題です。ただ,乗務員がどうしても巡回に来られない場合や乗客に注意するのに恐怖心を感じる場合もあるかもしれません。ましてや,他の乗客がマナー違反の乗客に注意してトラブルに巻き込まれるのはたまったものではありません。したがって,鉄道会社としては,少なくとも車内放送等で注意を促すべきです。

 電車の車内放送を聞いていると,無駄な放送が多すぎます。いまだに「車内は禁煙です。車内でのお煙草はご遠慮ください。」などという放送が流れていますが,こんなことは誰もが了解している常識で,今さら放送する意味はありません。こんな放送をするくらいなら,「グリーン車では1人1席の使用のみ許されており,他の座席や他の乗客の邪魔になる場所に荷物を置くことはできません。これを守れない方には,グリーン車に乗ることを禁止し,乗務員がその違反を発見したときは直ちにグリーン車からの退去を求めます。」くらいの放送をすべきです。

乗務員の対応に疑問

 この問題に限らず,車内マナーと鉄道会社や乗務員の対応に疑問を感じることはしばしばあります。

 1つは,数年前,徹夜で仕事をして,徹夜明けの平日に始発で帰宅しようとして,地下鉄の女性専用車両(最後尾車両)に乗車したときのことです。

 この路線は平日の始発から午前9時30分までは女性専用車両制度を実施していますが,始発でしたので,当然ながら,どの車両もガラガラで,女性専用車両にも私以外に2人くらいしか乗車していませんでした。私は,女性専用車両に反対しているわけではなく,混雑時に女性専用車両に乗車するようなことはしません。しかし,このときは,女性専用車両もガラガラで,乗換えに都合がよかったため,あえてその車両に乗車し,発車時刻までしばらく時間があったので,発車を待って座席に座っていました。

 すると,ドアを一つ挟んで,斜向かいのシートに座っていた高齢の女性が,私に向かって「ここは女性専用車両だから,出ていけ。」と言ってきました。私が黙ってそのまま座っていると,その女性は,わざわざ乗務員を呼んできて,私に対して女性専用車両から出て行くように忠告しろと促していました。私は,その乗務員が女性を諭してくれると思っていましたが,なんと,その乗務員は,私に対し,女性専用車両から出て行くように忠告してきました。常識的に考えて,このような状況で女性専用車両から出て行く理由はないと思い,私がこの車両に乗車している理由(他の車両では乗換えに不便)も説明しましたが,乗務員は私の話を聞き入れませんでした。結局,私はいくら説明しても無駄だと思い,面倒になって,隣の車両に移動しました(女性専用車両の隣の車両は弱冷房車で夏場は蒸し暑いので,2つ隣の車両まで移動しなければならなくなります)。他にもう一人の男性が女性専用車両に乗車していましたが,この男性も乗務員に促されて他の車両に移動させられていました。彼も私と同じように考えて,女性専用車両に乗車していたのではないかと思いますが,いい迷惑です。この乗務員の対応はマニュアルどおりなのかもしれませんが,あまりにも杓子定規です。

思いやりの強制

 もう1つは,横浜市営地下鉄が実施している「全席優先席」制度,さらには,お年寄りや身体の不自由な方に座席を譲るというマナーないし道徳観(これを強制する雰囲気)に対する疑問です(私は滅多に横浜市営地下鉄には乗らず,数年前に乗ったときに思った疑問ですので,現在の「全席優先席」制度の詳細は分かりませんが)。

 誤解のないよう最初に言っておきますが,お年寄りや身体の不自由な方に座席を譲るという思いやり自体は大変良いことだと思います。また,横浜市営地下鉄がこのような理念に基づいて「全席優先席」制度を実施しているということも理解できます。しかし,思いやりというのは,本来,自発的なもので強制されるべきものではありませんし,座席を譲るべき側とされる人々(若者や健康な人々)にもいろいろな事情があります。また,高齢者でも元気な方がいる一方で,若者でも仕事で疲れ切っていたり体調が悪かったりする方もいて,外見からは必ずしもよく分かりません。したがって,一律に「全席優先席」としたり,常に座席を譲るべきとしたりするのは,どうかと思います。

 私にとっては,電車に乗るときに座席を確保することはとても重要なことです。私は,電車に長時間乗っていることが多く,その間は本を読んだり眠ったりするための貴重な時間の一部です。立ちながら本を読んだり眠ったりしている人もいますが,私はそのような器用なことができないため,電車に乗っている時間を有意義に過ごすためには座席を確保することがとても重要になります。そのため,急行に乗れる場合にも,座席を確保できないときには,急いでいなければあえて1本待って各駅停車に乗ります。また,その電車にグリーン車があるときには,グリーン料金を支払ってでもグリーン車に乗ることが多いです(それは経済的に余裕があるからではなく,たとえば,食事を一食我慢するか,グリーン車に乗るのを我慢するかという選択であれば,食事を我慢します)。わざわざ座席を確保するためにあえて1本遅らせて電車に乗ったにもかかわらず,その座席を譲ってしまったのでは1本遅らせた意味がありません。自らグリーン料金を支払ってグリーン車に乗ったにもかかわらず,その座席を他人に譲るようなものです。

 もちろん,私が座席に座っている目の前で,急に体調を崩して倒れかかっている人がいるというような緊急事態の場合には,たとえ1本遅らせて確保した座席であったとしても,その座席を譲ることは厭わないと思います。しかし,そのような緊急事態でもなく,広くお年寄りや身体の不自由な方々に座席を譲るということになると,きりがありません。

 そんな風に考えている方々も多いのではないでしょうか。

 逆に,私自身が高齢者や身体が不自由になった場合を考えると,座席が必要であれば,自分自身で座席を確保しようと努めます。1本遅らせて座席を確保できるのであれば1本遅らせますし,その電車にグリーン車があるときには,グリーン料金を支払ってでもグリーン車に乗ります。もちろん,時間的余裕や金銭的余裕がなければ,立って電車に乗ることもあると思いますが,時間的・金銭的余裕がないからといって,無理してまで立って電車に乗ることは避けると思います。そんなことをして,乗車中に倒れてしまえば,電車が遅延するなど他の乗客に迷惑をかけてしまいます。また,座席を譲ってくれた人が,もしかしたら1本電車を遅らせて,わざわざその座席を確保していたのかもしれませんし,私よりも疲れていたり体調が悪かったりするかもしれません。そんな人に気を遣わせて座席を譲ってもらうのも申し訳ありません。

 お年寄りや身体の不自由な方を思いやるという気持ちは大切ですが,お年寄りや身体の不自由な方も(自分がそうなったときに),他の乗客に迷惑をかけたり無理に気を遣わせたりしないという心掛けも大切であると思います。座席を必要とするお年寄りや身体の不自由な方は,無理に急いで電車に乗らず,ゆとりをもって,できる限り自分自身で座席を確保するように努めるといいと思います。実際にこれを実践している方も多いと思いますが。

 どの路線のどの車両にも優先席はあります。座席を必要とするお年寄りや身体の不自由な方は,優先席を有効に活用すべきです。同じ車両内で,優先席が空いているにもかかわらず,一般席を譲ってもらっている人を見かけると,最初から優先席に座ればいいのにと思います。また,若者や健康な方は,お年寄りや身体の不自由な方が気兼ねなく優先席を利用できるように,よほど空席がない限り,優先席に座ることは避けるべきではないかと思います。

 高齢化が進行している現在では,座席を必要とするお年寄りや身体の不自由な方が気兼ねなく十分に優先席を活用できるように,もう少し優先席を増やしてもいいと思います。ただ,「全席優先席」ということになると,若者や健康な方が安心して座れる座席がなくなり,先ほどのようにわざわざ1本遅らせてでも座席を確保したいという場合にどうしていいのか分からなくなってしまいます。また,優先席という意味も薄れて,実質的にすべてが優先席でなくなってしまい,逆効果になるのではないかと思います。

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