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地方在住者が東京の弁護士に事件を依頼するメリット(地域性と弁護士費用)

 弁護士を選ぶとき,地元の弁護士にするか,遠くても有能そうな弁護士にするかという問題があります。
 特に,東京その他大都市から離れた地域にお住まいの方々の中には,「東京(大都市)の弁護士のほうが地元(地方)の弁護士よりも有能なのではないか」と思って,わざわざ地元から遠く離れた東京(大都市)の弁護士に事件を依頼する方も少なくないと思います。実際に,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県辺りからだと,わざわざ東京に相談にやってくる方も少なくありません。その方々に話を聞いてみると,その多くは「東京の弁護士のほうが良さそうだと思って東京に来ました」と言います。
 確かに,日本全国の弁護士のうち半数くらいは東京に事務所を構えていますから,人数的に見れば,東京のほうが有能な弁護士が多いといえます。しかし,逆に言えば,有能でない弁護士も東京のほうが数多くいるといえます。結局,比率で見れば,東京も地方も大差はないと思います。特殊な事件については,東京の一部の弁護士しか扱っていない場合があるかもしれませんが,一般市民が依頼するような普通の事件については,一般論として,東京の弁護士のほうが地方の弁護士よりも優れているということはないと思います。

 ただ,一つ言えることは,他の業界と同じように,弁護士業界でも,東京のほうが地方よりも圧倒的に競争が激しいということです。特に,近年は弁護士大増員によって競争が激化しています。このような状況では,価格競争(弁護士費用の低下)は避けられません。特に,一般市民の方々は,弁護士に馴染みがなく,弁護士のサービスの質を見極めるのが難しいため,弁護士がサービスの質で競争することには限界があり,価格競争にならざるを得ません。
 弁護士業界では,かつて日弁連報酬基準というものがあり,すべての弁護士がこれに従って弁護士費用(着手金・報酬等)を定めていました。平成16年4月に弁護士報酬が自由化されて以降も,しばらくの間は,ほとんどの弁護士がこの報酬基準をそのまま使って弁護士費用を定めていたようです。現在でも,この報酬基準に従って,あるいは,この報酬基準を参考として,弁護士費用を定めている弁護士が大多数だと思いますが,特に一般市民を対象とした東京の法律事務所では,だいぶ低価格化が進んでいるように感じます。

 弁護士費用の低価格化が相談者・依頼者にとって必ずしも有益だとは思いません(その理由については改めて別の機会に説明したいと思います)。ただ,そもそも日弁連報酬基準には不合理(弁護士の労力や成果と報酬額とが見合っていない)と思われる部分もあるので,その部分を合理的に修正することは,価格競争に拘わらず,然るべきことだと思います。弁護士業界の競争激化は,多くの弁護士が日弁連報酬基準の不合理な点に目を向け,相談者・依頼者目線で真剣にこれを見直そうという動きをもたらしたという点では,相談者・依頼者にとって有益なことであったと思います。
一般市民を対象とした東京の法律事務所では,このような観点から報酬基準の見直しが進んでいるように思われます。しかし,地方では,東京ほど弁護士間競争が激しくないためか,日弁連報酬基準をそのまま使い,東京に比べて弁護士費用を高めに設定している法律事務所が多いように思います(もちろん一概にはいえませんが)。
このような東京と地方との弁護士費用の相場の違いを考えると,東京から遠方の地方にお住まいの方が,弁護士に支払う遠距離交通費や日当を気にかけて,地元の弁護士に事件を依頼する合理性はないように思います。もちろん,サービスの質でも費用面でも良いと思われる弁護士が地元にいるのであれば,その弁護士に事件を依頼するのが一番でしょう。しかし,最初から選択肢を地元の弁護士に限定せず,たとえ遠方の弁護士であっても,ご自身でベストと思える弁護士を選んでみてはいかがでしょうか。

 私がこのコラムを書こうと思ったきっかけは,先日,東京から遠く離れた地方に在住する方が,わざわざ当事務所まで相談にいらっしゃったことです。相談の結果,事件を依頼したいということでしたので,当事務所で受任しました。
 当事務所としては大変有難いことですが,「なぜ地方在住の方がわざわざ東京の弁護士に事件を依頼するのか」とも思いました。ですが,よくよく考えてみれば,先ほどのとおり経済的に見て合理的な判断だと思います。
 この事件では,訴訟やその他裁判手続の管轄裁判所は地元の裁判所になるため,東京の弁護士に事件を依頼すれば,地元の弁護士に依頼するよりも余計に遠距離交通費や日当が発生する可能性があります。しかし,訴訟になったとしても,必ずしも毎回の期日に裁判所に出頭する必要はなく,電話会議(民事訴訟法170条3項)の利用などによって,交通費や日当をかなり抑えることができます。また,民事保全事件(仮差押え,仮処分)などでは,地方の裁判所は裁判官面接を行わないことが多く,裁判所との郵送でのやり取りだけで済むため,交通費や日当が全くかからないことが多いです(東京地裁は原則的に全件で裁判官面接を行うため,代理人弁護士が裁判所に出頭する必要があります)。実際,先ほどの事件では,つい先日,保全事件を終えたところですが,一度も地元の裁判所に行かず保全命令(決定)をとることができました。
 依頼者が弁護士と面談・打合せするための交通費も考えなければなりませんが,一度顔を合わせれば,基本的に電話・メール・郵便などのやり取りで済むので,依頼者が何度も事務所に足を運ぶ必要はありません。
 したがって,ある程度の遠距離交通費や日当を考慮しても,基本的な弁護士費用(着手金・報酬)で東京のほうが地方よりも相場が安いことから,弁護士費用その他諸費用をトータルで見ると,東京の弁護士のほうが地方の弁護士よりも安いという場合が少なくないと思います。

 さらに,相手方の住所地が東京地裁管轄内であるなどの事情により,訴訟等の管轄裁判所が東京地裁になる場合であれば,一層のこと,東京の弁護士のほうが地元(東京から遠方の地方)の弁護士よりも,費用面でメリットが大きいといえます。基本的な弁護士費用(着手金・報酬)で東京のほうが地方よりも相場が安いうえに,先ほどの事例とは逆に,地元の弁護士には遠距離交通費や日当がかかるのに対し,東京の弁護士にはその費用がかからないからです。
 また,控訴事件については,東京その他大都市(高等裁判所所在地)の裁判所が管轄裁判所になるので,東京(その他高裁所在地)の弁護士のほうが地元(東京その他高裁所在地以外の地域)の弁護士よりも,費用面でメリットが大きいといえます。たとえば,一都三県のほか,茨城県,栃木県,群馬県,静岡県,山梨県,長野県,新潟県は東京高裁の管轄なので,これら地域の事件の控訴審を依頼する場合には,東京の弁護士のほうが遠距離交通費や日当という面では安く済みます(控訴審は第一審に比べて多数回の期日を重ねることはないので,それほど気にする必要はないかもしれませんが)。

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