注意!不倫問題(男女問題,慰謝料請求)に強い(専門)弁護士 | 専門分野と弁護士費用の疑問に答えます
Loading

注意!不倫問題(男女問題,慰謝料請求)に強い(専門)弁護士

 先日,ある男性(Aさん)から電話があり,不倫慰謝料請求の通知書(内容証明郵便)が届いたということで,相談を受けました。Aさんの話によると,Aさんはある既婚女性(Bさん)と不倫関係にあり,Bさんの夫の代理人弁護士から,不倫慰謝料として500万円を請求されたそうです。Aさんがその弁護士をネットで検索したところ「不倫問題に強い弁護士」ということらしいです。
 私は「不倫問題に強い弁護士とは何者か?」と思い,ネットで検索してみましたが,どうやら,最近は,「不倫問題」,「男女問題」,「慰謝料請求」に「強い(専門)弁護士」という謳い文句が流行っているようです。
 私が弁護士になったばかりの頃(13年前)は,このような謳い文句で集客している弁護士はほとんどいなかったのではないかと思います(少なくとも当時は聞いたことがありませんでした)。というのも,そもそも「不倫問題」や「男女問題」は専門化されるような分野ではなく,ましてや「慰謝料請求」というのは,一括りにして論じられるような特定の「分野」ですらないからです。「慰謝料」というのは,損害項目の一つにすぎず,不倫問題だけでなく,交通事故,医療過誤,セクハラ・パワハラ,名誉毀損,暴行・傷害その他加害行為など多種多様な事件類型で問題となるので,「慰謝料」だけを取り上げて「その専門」などといえるようなものではありません。

 では,なぜ,「不倫問題」,「男女問題」,「慰謝料請求」に「強い(専門)弁護士」という謳い文句が流行っているのでしょうか。それは,弁護士側の都合で,不倫慰謝料請求事件で集客したいということに尽きるのではないかと思います。
 弁護士が取り扱う多種多様な事件類型の中で「不倫問題」すなわち「不倫慰謝料請求」というのは,事件数としては比較的多く,かつ,事案としては極めて単純で技術力や労力をあまり必要としません。さらに,ここが一番のポイントかもしれませんが,「慰謝料」というのは明確な基準額があるわけではないため(特に不倫の場合),弁護士報酬の算定方法によっては着手金や成功報酬が不相当に高額化しやすいといえます(この点は後で詳述します)。そのため,「不倫問題」で集客したいという弁護士が増えているのではないかと思います。
 なお,「男女問題」や,宣伝ワードとしての「慰謝料請求」も,ほとんどは「不倫慰謝料請求」及びこれに付随する問題を指していると思われます。

 これに対しては異論があるかもしれません。「どんな分野(不倫問題)にも専門性があるはずだ」,「不倫問題の実績(取扱件数)の多い弁護士のほうが不倫問題に精通しているはずだ」と思う方もいるかもしれません。
 確かに,弁護士が取り扱う多種多様な事件類型の中には専門性の高い分野もあります(特許その他知的財産権,海事問題など)。しかし,弁護士の能力(事案分析能力,起案能力,証拠収集能力,交渉能力など)はどんな分野でも基本的に共通し,専門性の高い特殊な分野でもない限り,その分野固有の特殊な知識・能力を必要とするわけではありません。
 たとえば,一般民事事件を広く取り扱い,それらの事件処理で高い能力を発揮してきた弁護士は,仮に不倫問題をほとんど取り扱っていなかったとしても,不倫問題を依頼されれば,同じように高い能力を発揮するはずです。そもそも不倫問題はありふれた事件類型で,一般民事事件を広く取り扱う弁護士であれば,一定の弁護士経験がある限り,何度も不倫問題を扱っているはずですので,「不倫問題に強い」と謳っているか否かは関係ありません。

 不倫慰謝料請求事件に関して最も注意しなければならないのは,解決事例(実績)と弁護士報酬(着手金・成功報酬)の問題です。
 法律事務所(弁護士)のホームページを見ると,解決事例(実績)として,「相手方から不倫慰謝料として1000万円を請求されて,短期間の交渉で300万円にまで減額しました。」(事例①)「相手方から不倫慰謝料として500万円を請求されて,訴訟で争って判決で100万円にまで減額しました。」(事例②)などといった記載をよく見かけます。一般の方々は,これらの事例を見て,事例①では700万円,事例②では400万円もの減額(成果)を勝ち取ったと思うのではないでしょうか。
 確かに表面上はそうですが,実質的に見てそれほどの成果があったといえるのかは疑問です。
 というのは,事例①については,一般的に不倫慰謝料相場として300万円というのは結構な高額で,そもそも1000万円の請求というのが法外だった可能性が高いと思います。そうすると,請求された側としては,交渉段階で早期に解決を図るとしても,たとえば100万円程度にまで減額できた可能性もあります。さらに,相手方がこれを争うのであれば,安易な妥協をせず,訴訟になってでも争い,最終的に判決ないし訴訟上の和解で数十万円にまで減額できた可能性もあります。事案の詳細を見なければ何ともいえませんが,請求された側としては,交渉での解決を急いだために,安易に高額な和解をしてしまった可能性もあるのではないかと思います。
 事例②については,一般的に不倫慰謝料相場として100万円というのはありふれた金額(判決認容額ないし和解額)で,そもそも500万円の請求というのが法外だった可能性が高いと思います。そうすると,請求された側としては,100万円の判決認容額というのは無難な(可もなく不可もない)金額で,これも事案の詳細を見なければ何ともいえませんが,それほど大きな成果があったわけではない(少なくとも実質的に400万円もの成果を勝ち取ったわけではない)ともいえます。

 さらに,問題は弁護士報酬(着手金・成功報酬)です。
 事例①②はいずれも「請求された側」の解決事例ですので,「請求された側」の弁護士報酬について見ると,一般的に,着手金は「相手方から請求された額」を「経済的利益」とし,成功報酬は「相手方から請求された額からの減額分」を「経済的利益」として,次の計算式により算定されます(旧日弁連報酬基準,訴訟事件の場合)。
(経済的利益が300万円以下の場合)
着手金:「経済的利益」×0.08(消費税別)
報 酬:「経済的利益」×0.16(消費税別)
(経済的利益が300万円を超え3000万円以下の場合)
着手金:「経済的利益」×0.05+9万円(消費税別)
報 酬:「経済的利益」×0.1+18万円(消費税別)
 事例①②について,「表面上の成果」を基準として着手金・成功報酬を算定すると,次のようになります。
(事例①)
着手金:1000万円×0.05+9万円=59万円(消費税別)
報 酬:(1000万円ー300万円)×0.1+18万円=88万円(消費税別)
(事例②)
着手金:500万円×0.05+9万円=34万円(消費税別)
報 酬:(500万円ー100万円)×0.1+18万円=58万円(消費税別)

 事例①②について,依頼された弁護士が「表面上の成果」を基準として上記のような着手金や成功報酬を取るとすれば,問題ではないかと思います。
 上記の着手金及び成功報酬は,相手方から請求された金額(事例①は1000万円,事例②は500万円)を前提としています。しかし,前記のとおり,事例①②では,いずれも相手方の請求額は法外です(その可能性が高い)ので,これを前提とすれば,着手金及び成功報酬が高額すぎることになって,依頼者は過大な負担を負います。極端な話をすれば,相手方が不倫慰謝料として3000万円を請求すれば着手金は159万円(3000万円×0.05+9万円)にもなってしまいます(消費税別)。そもそも慰謝料相場としてせいぜい200万円が上限であるような事案で,たまたま相手方が法外な3000万円を請求すれば着手金が159万円となり,同じ事案で,相手方が節度をもって200万円を請求すれば着手金は16万円(200万円×0.08)にとどまるというのは,あまりにも不均衡です。

 当事務所では,不倫慰謝料請求事案について弁護士報酬(着手金・成功報酬)を定めるにあたっては,単純に請求額を基準とするのではなく,事案の内容に従って相当な慰謝料相場を基準としています。たとえば,慰謝料相場としてせいぜい200万円が上限であれば,請求する側からの依頼でも,請求される側からの依頼でも,着手金は16万円(200万円×0.08)になります(消費税別,交渉段階ではその3分の2)。もちろん,慰謝料相場がせいぜい200万円であっても,請求する側からの依頼であれば,相手方に対しては300万円を請求することもありますし,請求される側からの依頼であれば,相手方から1000万円を請求される場合もありますが,そのような場合であっても,着手金は16万円(消費税別,交渉段階ではその3分の2)です。成功報酬についても同様です(ただし,交渉段階で解決しても訴訟の場合と同額です)。
 不倫慰謝料はよほど特殊な事情がない限りそんなに高額化することはないので,上記のように弁護士報酬基準に修正を加えると,弁護士報酬(着手金・成功報酬)もそれほど高額にはできません。そのため,私の感覚からすると,不倫慰謝料請求事案は弁護士報酬(着手金・成功報酬)が低額な事案です。弁護士としての技術力を駆使するような「やりがいのある事案」というわけでもありません。その意味で,正直申し上げて,特に受任したいという案件ではありません(受任したくないというわけでもありません)。ただ,特に難しくもなく労力を要するわけでもないので,依頼があれば普通に受任して普通にこなしています。

 他の法律事務所(弁護士)でも,不倫慰謝料請求事案について弁護士報酬(着手金・成功報酬)を定めるにあたっては,同様に修正を加えているところが多いと思います。ただ,なかには,前記事例①②のように法外な請求額をそのまま基準として(あるいは若干減額する程度で),弁護士報酬(着手金・成功報酬)を定めている法律事務所(弁護士)があるかもしれません。不倫慰謝料請求事案を依頼しようとする場合には,その点をよく確認したうえで弁護士を選んだほうがいいと思います。
 なお,不倫慰謝料請求事案に限らず,さまざまな慰謝料請求事案,その他基準額(経済的利益)が不明瞭な事案については,同様に,弁護士報酬(着手金・成功報酬)の基準額(経済的利益)をいくらにするのかという問題が生じます。したがって,このような事案を依頼しようとする場合にも,その点をよく確認したうえで弁護士を選んだほうがいいと思います。

関連記事

  1. オーケーストア(OKストア)の経営理念に学ぶ
  2. 非婚化・少子化問題を考える(結婚・離婚制度の問題点)
  3. 弁護士探し・選びを考えている方にお勧めの本
  4. 刑事事件の報酬基準の不合理性①(保釈)
  5. 中野信子著「ヒトは『いじめ』をやめられない」を読んで
  6. インターネット普及がもたらした各種業界の下請化
  7. 春日部地区稲門会の新年会・交流会に参加して
  8. 消去法による弁護士選び(いかに情報を絞り込むか)
  1. 弁護士探し・選びのポイント
    (弁護士のホームページの読み方)
  2. 準備書面のご紹介
    (実際の事件を素材として)
  3. こんなときどうすればいいのか?
    (最低限の緊急時の対応)
PAGE TOP