ジャパンライフ事件(同様の被害を繰り返さないために)
皆さんもニュースでご存知かと思いますが,昨日(平成30年11月12日),今年3月に破産手続開始決定を受けたジャパンライフの第1回債権者集会が開催されました。報道によると,被害者(顧客)は約7000人,負債総額は約2400億円,ジャパンライフの資産を換価してもせいぜい4~5億円で,一般債権者(顧客)への配当はほぼ無理のようです。
ジャパンライフのセールストークによると,要するに,磁器治療器等の取引に関して現金を預ければ,元本保証で年6%の配当を受けられるということです。被害者には高齢者が多く,1人当たりの被害額は約3000万円で,なかには1人で1億円~2億円もの大金を預けた人もいるようです。被害者の多くが高齢者ということで,一人暮らしの高齢者が営業マンに優しくされて信頼し,「元本保証」と言われ安心して,老後のために蓄えていた預貯金や生命保険を解約して根こそぎ預託したという方も少なくないようです。
財産は危険にさらされている
私のFacebookページの投稿「安全や権利保全にコストをかける必要性」(平成30年10月15日)でも取り上げましたが,100万円の債権(100万円を返してもらう権利)と100万円の現金とでは全く価値が異なります。いったん自分の手を離れた現金は,誰がどんな保証をしようとも,確実に戻ってくるとは限らないということを常に頭に入れておくべきです。多くの人々は,水や空気と同じように,安全であること(自分の財産が守られていること)が当然であるかのように思って,財産を守ろう(財産を侵害されないようにしよう)という意識が希薄で,財産を増やそうということばかりに目を奪われがちですが,日常生活の中でも常に財産は危険にさらされているということを意識すべきです。
本件のような預託商法に多額の出資をして多数の被害者が出たという事例は,過去にも繰り返し起こっており,その手口も同じようなもので,その度にニュースでも大きく取り上げられてきました。それにもかかわらず「またか」という思いです。
本件では,被害者の多くが高齢者で,身近に信頼できる相談相手がおらず,ジャパンライフの営業マンが相談相手になってしまったことが被害発生の大きな要因の一つになっていると思います。高齢者が日頃から身内と頻繁にコミュニケーションをとっていれば,このような被害を防げたかもしれません。しかし,最近では,一人暮らしの高齢者が増えて,何でも相談できる相手が身近におらず,身内との関係も希薄で,日常的なコミュニケーションがとれていない場合が少なくないのかもしれません。
かかりつけ弁護士の勧め
本件のような被害が再び発生しないようにするためには,身内の間で日頃から何でも相談できる環境を整えることが一番です。それが難しいようであれば,高齢者が孤立せず,身近に普段から何でも気軽に相談できる相手を持つべきです。それは,友人でも近所の人でもいいと思います。ただ,今回の事件では,知人に誘われてジャパンライフに出資したという人もいたようですから,身近な相談相手といっても,冷静かつ合理的に判断できる人でなければなりません。
その意味では,信頼できる弁護士の存在というのは大きいと思います。ただ,一朝一夕には信頼関係は築けません。本件のように,何かトラブルに巻き込まれてからでは手遅れになるおそれもあります。何もない今のうちから,良き相談相手となる弁護士を探してみてはいかがでしょうか。「もっと早く相談していれば……(かかりつけ弁護士の勧め)」もご覧ください。