簡素な葬式で葬儀費用を安く抑えるために(葬儀社選び) | 専門分野と弁護士費用の疑問に答えます
Loading

簡素な葬式で葬儀費用を安く抑えるために(葬儀社選び)

 親族が亡くなった場合,どのように対応すべきか(遺体の安置場所,役所への死亡届,葬儀,火葬など),特に葬儀社選びは重要な問題です。その後の遺産相続やそのための弁護士選びも重要な問題ですが,死亡届・葬儀等の段取りや葬儀社の選び方は,それ以上に緊急性を要する重要な問題です。

 葬儀のやり方(宗教・宗派,葬儀場,参列者の人数,演出,その他葬儀コーディネイトなど)にこだわりのある方もいると思いますが,できるだけ簡素に費用をかけず葬儀を済ませたいという方も多いのではないかと思います。私も,家族や私自身の葬儀はできるだけ簡素に費用をかけず済ませたいと思っています。

 葬儀社の能力(対応力,演出力?)に大きな違いがあるのかどうか分かりませんが,どんなに素晴らしい葬儀をしたからといって,故人が極楽浄土で往生できるわけでもないと思います(死後の世界は分かりませんが)。その点で,弁護士の能力如何によって事件解決の結論が大きく異なる可能性があるのとは違います。したがって,葬儀のやり方にこだわりのない方々にとっては,法律と慣習に従って最低限の手続・儀式を滞りなく行えればいいことですので,最低限の手続を把握したうえで,基本的にはできるだけリーズナブルな葬儀社を選べばいいと思います。有名な葬儀社や大手の葬儀社だからといって安心であるという保証はありませんし(小規模の葬儀社と同じサービスで,単に宣伝広告費分が料金に上乗せされているだけかもしれません),小さな葬儀社でもある程度の実績があれば一般的に問題はないと思います。よく分からないと,宣伝広告に乗せられて「多少高くても有名な葬儀社,大手の葬儀社」などと考えがちですが,このような考えには何の合理性もありません。

 葬儀社選びには,費用の問題以外にも,親切・丁寧な対応をしてくれるかという点も重要だとは思いますが,その点については,葬儀社に問い合わせて,葬儀費用や手続・葬儀の段取りなどについて親切・丁寧に説明してくれるかどうかで判断すればいいと思います。葬儀費用等について親切・丁寧に説明してくれる葬儀社は,葬儀の対応も親切・丁寧にやってくれるのではないかと推測することができます。

 以上を踏まえて,私の場合であれば,親族が亡くなったとき,どのように対応し,どのような基準で葬儀社を選ぶのかについてお話したいと思います(葬儀後の手続等については省略します)。なお,私は,事前に親族の希望を確認して,火葬(直葬)式又は家族葬を行おうと思っています。

葬儀社選びの基準

⑴ 遺体の安置場所を決める

 親族が病院その他施設で亡くなった場合,死亡診断書が作成されたうえで,速やかに遺体を病院等から自宅又はその他遺体安置所に搬送するように求められ,病院等と提携している葬儀社が紹介される場合が多いようです。しかし,どんな葬儀社か分かりませんので,その葬儀社には依頼せず(遺体の搬送先をその葬儀社の手配した遺体安置所にせず),遺体を自宅(又は自分で選んだ葬儀社が手配した遺体安置所)に搬送してもらいます。なお,病院等と提携している葬儀社が遺体安置所の手配だけでも応じてくれるのであれば,とりあえずそこに遺体を搬送してもいいと思います(ただし,遺体安置料の確認が必要です)。

 親族が自宅で亡くなった場合には,かかりつけの医師等に連絡して死亡診断書を作成してもらいます。

⑵ 死亡日から7日以内に,死亡診断書を持って役所へ死亡届を提出し,火葬許可証を発行してもらう

  死亡届の期限前に葬儀社が決まれば,葬儀社が死亡届等も代行してくれるのではないかと思います。

⑶ 火葬(直葬)式又は家族葬の費用と葬儀社の対応を比較して葬儀社を選ぶ(→葬儀)

 インターネットで自宅から比較的近い(あるいはその地域に対応可能な)葬儀社を検索し,火葬(直葬)式又は家族葬の葬儀費用を比較して,料金体系が明瞭に表示してあり,ある程度安価な(相場以内の)葬儀社を候補として数社選んだうえ,各社に電話をして(余裕があれば各社を訪ねて),葬儀費用や手続・葬儀の段取りなどについて説明を求めます。そこで,親切・丁寧な説明をし,葬儀費用の上限を明示してくれた葬儀社の中で,最も親切・丁寧な説明をしてくれた葬儀社を選びます(「20万円~」などと曖昧な説明をして上限を明示しない葬儀社は除外し,多少金額が高くても最も親切・丁寧な説明をしてくれた葬儀社を選びます)。

 ここでのポイントは,多少の金額の差よりも親切・丁寧な対応です。多数の葬儀社から数社の候補を絞り込むにあたっては,いちいち多数の葬儀社の話を聴いている暇はなく,客観的に明確な基準が必要になるので,葬儀費用の相場を調べて,その範囲内で何社かの候補を選ぶことになると思います。しかし,その候補の中から1社選ぶ場合には,やはり実際に話をしてみて,親切・丁寧・正直であると感じた葬儀社を選ぶべきであると思います。どんな商品・サービスであっても(特に自分の知らない業界については),宣伝文句を真に受けず,最後は相手(売り手)を信頼できるかどうかによって判断するほかないと思います。

 なお,葬儀社の葬儀費用見積りには,お布施や心付けなどが含まれていないのが一般的で,実費や関係業者に支払う費用が含まれていない場合も多いので,それらも確認しておいた方がいいでしょう。

 ちなみに,ある統計によると,地域によってばらつきがありますが,葬儀費用の全国平均は195万円(葬儀一式費用121万円,飲食接待費用30万円,寺院費用47万円)のようです。火葬(直葬)式や家族葬の場合には比較的安く,具体例を示すと次のとおりです。なお,火葬(直葬)式については,葬儀費用を10万円以内としている葬儀社もありますが,そのような葬儀社では,火葬料金,ドライアイス,搬送料などが上乗せになることが多いようですので,総額の確認が必要です。

  ① 葬儀社A
   ⅰ 火葬式    19万8000円~(別途お布施4万5000円)
   ⅱ 自宅家族葬  39万8000円~(別途お布施15万円)

  ② 葬儀社B
   ⅰ 火葬式    18万8000円(別途お布施)
   ⅱ 家族葬    48万8000円(別途お布施)

終活の準備

 今では「終活」(人生の最期を迎えるにあたっての準備やそこに向けての活動)という言葉もすっかり定着し,「終活」に関する本が多数出版され,新聞や雑誌でも頻繁に「終活」に関する特集が組まれています。これも高齢化社会の進行の影響でしょう。

 私も,以前から,いかにして老後を迎え,周囲の人々にできるだけ迷惑をかけないような老後生活を送って最期を迎えるかということをときどき考えています。私が高齢者問題や地域コミュニティ問題を扱うNPO法人に入会したのも,そのような考えからです。

 私の両親も,すでに高齢で,現在は幸いにして大病もせず健康な生活を送っており,まだまだ長生きすると思いますが,いずれは最期のときを考えなければなりません。あまり考えたくないことで,両親に向かって話をすることは憚られますが,いざというとき慌てないように,少なくとも,両親が亡くなったときの対応や葬儀社選びについては,今のうちから考えておかなければならないと思っています。

 私は,本ホームページで「弁護士選びのポイント」についてかなりのページを割いて述べてきました。これをご覧になった皆さんは違和感を覚えたかもしれませんが,私としては,弁護士業界をよく知らない方々が弁護士に事件を相談・依頼しようとする場合,「弁護士選びのポイント」が最も重要な情報であると思って,このようなホームページの構成にしました。

 一般の方々が弁護士に相談・依頼しなければならないようなトラブルに巻き込まれた場合,弁護士に相談・依頼するまでの最低限の応急処置は知っておく必要があります。しかし,それ以上の細かく専門的な法律知識については必ずしも知っておく必要はなく,実際にそこまでの法律知識を身に着けるのは大変なことです。最低限の応急処置をとったうえで,信頼できる弁護士に事件を相談・依頼すれば,その後はその弁護士に事件解決を委ねることができます。その意味で,一般の方々にとっては,弁護士選びのポイントが最も重要な情報であるといえます。

 私は,親族が亡くなったときの対応(遺体の安置場所,役所への死亡届,葬儀,火葬など)や葬儀社選びについては,専門家ではなく,十分な知識はありません。ただ,親族が亡くなったときの対応や葬儀社選びは,人生の中で頻繁に起きる問題ではなく,突然の不幸に際して緊急に対応しなければならないという点で,突然のトラブル(法律問題)に巻き込まれた場合の対応や弁護士選びと共通する問題であると思います。そこで,弁護士選びと比較して,葬儀社業界をよく知らない私が,葬儀社選びについてどのように考えているかを示すことによって,皆さんの参考になればと思って,この記事を書きました。

関連記事

  1. 道徳の貯金箱(橘玲著「朝日ぎらい」より)
  2. 刑事事件の報酬基準の不合理性①(保釈)
  3. インターネット普及がもたらした各種業界の下請化
  4. たまには「99.9-刑事専門弁護士-」のような事件もある?
  5. 車内マナーと鉄道会社・乗務員の対応への疑問
  6. 非婚化・少子化問題を考える(結婚・離婚制度の問題点)
  7. 毅然と,真摯に,冷静に。
  8. 空き家問題
  1. 弁護士探し・選びのポイント
    (弁護士のホームページの読み方)
  2. 弁護士選びのポイントは誠実さ
    (実際の事件を題材として)
  3. こんなときどうすればいいのか?
    (最低限の緊急時の対応)
PAGE TOP