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3.弁護士に専門分野はあるのか?(「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」の胡散臭さ)

3.弁護士に専門分野はあるのか?(「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」の胡散臭さ)

① 新人・若手弁護士が「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」と謳っている現実

弁護士の仕事をしていると,「あなたの専門分野は何ですか?」と尋ねられることがよくあります。このような質問に対して「私の専門分野は〇〇です」と明確に答えられる弁護士は少ないのではないかと思います。特許その他知的財産権,渉外事件,海事事件のように,ある程度専門化されている分野もありますが,基本的に「専門分野はない」と考えていいと思います。

法律事務所のホームページを見ると,「〇〇専門」(あからさまな表現ではないですが),「〇〇に強い弁護士」と謳っているものをよく見かけますが,胡散臭さを感じます。
 たとえば,わずか数年しか実務経験のない若手弁護士が「○○専門」や「〇〇に強い弁護士」と謳っていることがよくあります。さらに,最近は弁護士過剰時代で就職先がないため,実務経験もないままいきなり独立開業する新人弁護士が増えています。そのような新人弁護士までもが「○○専門」等と謳っていることがよくあります。実務経験のほとんどない新人弁護士が「○○専門」等を謳うのは論外ですが,実務経験数年程度の若手弁護士が「○○専門」等と謳うのもどうかと思います。

② なぜ,債務整理,交通事故,相続,離婚,刑事事件などの分野で,「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」という言葉をよく見かけるのか?

それでは,一定の実務経験のある中堅・ベテラン弁護士であれば「○○専門」や「〇〇に強い弁護士」という言葉を信じていいのかというと,これもまた疑問です。

ホームページその他の宣伝広告で「○○専門」や「〇〇に強い弁護士」としてよく見かける分野は,主に債務整理(過払金,任意整理,自己破産,個人再生,その他借金問題),交通事故,相続(遺言,遺留分,遺産分割,相続放棄),離婚(婚姻費用,親権・養育費,財産分与,慰謝料請求),刑事事件(少年事件を含む)などです。これらの分野の事件の多くは,特に専門性の高いものではなく,言ってみれば「ごくありふれた事件」です。一般的な法律事務所に所属して一定の実務経験を積んだ弁護士であれば,誰でも一定数の事件をこなしているはずです。これらの分野について「〇〇専門」を謳っているか否かによって能力や経験値に大きな差があるとは思われません。
日本弁護士連合会(日弁連)の「業務広告に関する指針」(第3-12⑴)でも,「専門」表示は一般市民に対する誤導のおそれがあるため差し控えるべきであるとされています。「強い」の表示も同様であると思います。詳しくは2018年4月8日のコラム「弁護士探し・選びを考えている方にお勧めの本」をご覧ください。

それでは,なぜ,債務整理,交通事故,相続,離婚,刑事事件などの分野で「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」を謳う弁護士が多いのでしょうか。これらの分野は,全体の事件数が多く,定型的処理が可能な事件も多いため,大量に集客して機械的に処理することによって,手間暇かけずに簡単に利益を上げやすいからです。弁護士向けのマーケティングの本を見ても,これらの分野を専門分野として掲げる経営戦略を指南しているものが多く見られます。

インターネット上で「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」としてよく見かける法律事務所の中には,あちこちに複数のサイトを持っていて,一方では「交通事故専門」と謳っておきながら,他方では「相続専門」,「刑事事件専門」,「債務整理専門」,「離婚専門」などと謳っている事務所も見かけます。「すべてが専門」と言いたいのかもしれません。しかし,そうであれば一つのサイトでそのように表示すればいいのですが(「すべてが専門」というのもおかしな話ですが),それぞれのサイトであたかも1つの分野に特化しているかのように謳っているので,多くの方々に誤解を与えているのではないかと思います。
 もしあなたがご覧になっている法律事務所のホームページが「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」と謳っているのであれば,改めてその事務所名で検索して,他の分野でも「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」と謳っていないか確認してみてください。たくさんの専門分野が出てくることが多いのではないかと思います。

③ 債務整理,交通事故,相続,離婚,刑事事件の分野で宣伝広告している弁護士は優れているのか?

もちろん,債務整理,交通事故,相続,離婚,刑事事件などの分野で「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」を謳って,実際にその分野の事件を多数こなしている弁護士は,その分野に関しては他の弁護士よりも経験値が上がるでしょう。しかし,だからといって,その分野について事件処理能力が高いとはいえないと思います。

というのは,弁護士の能力は,事案分析能力,起案能力(書面作成能力),証拠収集能力,交渉力などで決まりますが,これらの能力は,事件類型ごとに異なるのではなく,基本的にどの分野にも共通するもので,多種多様な事件をこなすことによって磨かれていくものだからです。その意味では,むしろ「〇〇専門」を謳って,いつも同じような定型的な事件を同じように処理している弁護士は,なかなかスキルが磨かれないのではないかと思います。

特に,債務整理,交通事故,相続,離婚,刑事事件などは,全体の事件数が多く,定型的処理が可能な事件も多いため,大量に集客して機械的に処理する(場合によっては事務員に処理させる)ことによって,手間暇かけずに簡単に利益を上げやすい分野であるといえます。このような分野の事件ばかりをやっていて,特殊な事案や困難な事案をやったことのない弁護士が,はたしてスキルを磨くことができるでしょうか。

弁護士探し・選びにあたっては,「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」といった言葉に踊らされず,弁護士の実力・人柄を見極めることが大切です(弁護士の実力・人柄の見極めには,後述の「どのような基準で弁護士を選べばいいのか?」をご参照ください)。

『弁護士探し・選びの7つの誤解』に関連する記事です。

  1. もっと早く相談していれば……(「かかりつけ弁護士」の勧め)
  2. なぜ法律相談に躊躇するのか?(弁護士に対する誤ったイメージ)
  3. 弁護士に専門分野はあるのか?(「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」の胡散臭さ)
  4. 弁護士と司法書士・行政書士との違いとは?
  5. テレビCM,「大規模事務所」,「有名事務所・有名弁護士」は信頼できるか?
  6. どのような基準で弁護士を選べばいいのか?(弁護士の「能力」と「人柄」)
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