準備書面のご紹介(実際の事件を素材として) | 専門分野と弁護士費用の疑問に答えます
Loading
準備書面のご紹介(実際の事件を素材として)

準備書面のご紹介(実際の事件を素材として)

この「準備書面のご紹介」は,当事務所に相談又は依頼しようか否か迷っている方のためのページです。そのような方々のために当事務所では準備書面(主張書面)を掲載することにしました(下記事例1~5)。是非ご覧ください。

 なお,実際の訴訟等に提出された準備書面等を公開するにあたっては,当事者や関係者のプライバシーや個人情報保護にも配慮しなければなりません。そこで,この点にも細心の注意を払いつつ(マスキング等),可能な限り訴訟等の臨場感を減殺しないようにしたうえで,当事務所が実際に訴訟等で提出した準備書面等をご紹介します。

また,当事務所としても,ホームページ上で準備書面等を公開する以上は,「会心の作」とまではいかないものの,ある程度は自分で納得のいく出来栄えのもの選んでいます。そのため,ここに掲載した準備書面等はかなりのボリュームになるものも少なくありません(50頁に及ぶものもあります)。すべてを読む気にはなれないかもしれませんが,目次などを参考にかいつまんで読むことで,何となく全体像を感じ取っていただければ幸いです。
 特に「2.ベランダからの転落死と死亡保険金請求(上告受理申立理由書)」は,現場や遺体の状況から転落事故の原因・状況を推理する内容になっているので,推理小説を読むつもりで一緒に推理してみるとおもしろいかもしれません。ベランダからの転落原因については,元東京都監察医務院長・医学博士の上野正彦氏の文献も引用して科学的分析を行っています

いずれの準備書面等についても,自分自身で見て反省すべき点はいくつかあります。さらに,他人から見れば批判されるべき点がもっとあるでしょうから,準備書面等を広く公開することには恥ずかしいという思いもあります。ただ,「等身大の自分自身」を見て評価してもらいたいという思いもあるので,恥ずかしさを忍んで公開しました。
 同じように,多くの法律事務所(弁護士)が実際の訴訟等に提出した準備書面等をホームページ上に掲載するようになれば,比較対照することもできるので,弁護士選びを考えている方々にとって有益な情報になるのではないかと思います。ただ,なかなか難しいかもしれません。

このページでは,順次,事例及びその準備書面等を追加し,また,必要に応じて,掲載した準備書面等に対応する判決等も適宜掲載していきたいと思います。
 できれば相手方(対立当事者)の準備書面等も掲載して,皆さんには双方の書面を比較対照してもらいたいところですが,とりあえずは差し控えます。というのは,相手方の準備書面等を公開することは,著作権法上は同法第40条1項により問題ないとは思いますが,十分に精査しておらず,その他にも,マスキング等(プライバシーや個人情報保護)だけでは対処できない何らかの問題が生じるとも限らないからです。

弁護士の能力や誠実さを判断するには準備書面を見るのが一番です。

弁護士選びのポイントとしては,弁護士の能力,人柄(誠実さ),弁護士費用が考えられます(2019年1月13日コラム)。このうち,弁護士費用については,ホームページ上に掲載された報酬基準を見れば,客観的に他の法律事務所と比較することができるので,ある程度はその妥当性を判断できます。
 問題は,弁護士の能力と人柄(誠実さ)です。これはなかなか判断が難しいと思います。
 多くの法律事務所のホームページ上には「実績」や「解決事例」が掲載されています。しかし,これらは抽象的なものが多く,ある程度具体的に記載されていたとしても,それが本当なのか,仮に本当であるとしても,複数の弁護士が所属する法律事務所であれば,自分が実際に相談・依頼しようと思っている当該弁護士自身のものであるのかという疑念もあって,なかなか当該弁護士の能力を判断しがたいと思います。
 また,「実績」や「解決事例」は,事件の勝敗や金額の多寡など最終的な結果のみをアピールしているものが多いのですが,弁護士の能力は結果のみで判断できるものではありません。というのは,事件の勝敗(金額の多寡)の大勢は,基本的には,当該事件の事実関係やそれを裏付ける証拠の有無及びその証拠力の程度によって決まり,それらは弁護士の能力によって左右されるものではないからです。もちろん,弁護士の能力が事件の勝敗の大勢に影響を与える場合もあり,また,大勢には影響を与えなくても,結論に有意な違いをもたらすことはいくらでもあるので,弁護士選びは重要です。ただ,事件の勝敗など最終的な結果だけを見ても弁護士の能力は分かりません。

これに対し,準備書面等には,それを作成した弁護士自身の能力だけでなく,当該事件に対する意気込みや誠実さまでもが嘘偽りのない「生の姿」として表れています。
 弁護士の主戦場は訴訟です。訴訟等に提出された準備書面等は,弁護士が精魂込めて作り上げた「作品」です。小説家にとっての小説,作曲家にとっての楽曲,画家にとっての絵画のようなものです。
 弁護士に求められる能力は,事案分析能力,起案能力(書面作成能力),証拠収集能力,交渉能力などの技術力(いわば事件解決能力)です。それは,弁護士の取扱分野を問いません。
 その中でも最初に求められる基礎的能力は起案能力です。事案分析能力,証拠収集能力及び交渉能力は,なかなか見える形となって残るものではありませんが,起案能力は,その弁護士の作成した書面(準備書面等)として見える形で残ります。したがって,弁護士の能力を客観的に判断するには,その弁護士の作成した準備書面等を見るのが一番です。
 また,準備書面等には,それを作成した弁護士の事案分析能力や証拠収集能力も垣間見ることができます。さらに,準備書面等には,当該事件に対する弁護士の意気込みや誠実さも表れているといえます。すなわち,準備書面等において,どのような事案分析がなされているのか,どのような論理構成や展開がなされているのか(論理構成や展開に工夫が見られるか),自らの主張をどれだけ厚く深く説得的に論じているのか,自らの主張を裏付ける証拠としてどのようなものが提出されているか(準備書面の中でどのような証拠が引用されているのか)などを見ることによって,その準備書面等を作成した弁護士の起案能力だけでなく,事案分析能力,証拠収集能力,さらには当該事件に対する意気込みや誠実さまで読み取ることができます。
 交渉も裏づけ(交渉材料)がなければ有利に進めることはできず,その交渉能力を支えているのは,事案分析能力,起案能力及び証拠収集能力です。
 だからこそ,皆さんには,弁護士が作成した準備書面等を読んでいただきたいのです。

準備書面には「読みやすさ」も大切です。

準備書面等は,分量(ページ数)が多ければいいというものではなく,分量が多いことがかえってマイナスになることもあります。準備書面等の目的は,自己に有利な判断をしてもらうために裁判官を説得することですから,裁判官(読み手)の立場に配慮して,読む気を惹き起こし,かつ,読みやすい文章を心がけなければなりません。文章全体が整理されておらず何を言いたいのかよくわからない書面,同じことを繰り返し述べている書面,これらを含めてただ分量が多いだけの書面などは,誰も読む気がしないでしょう。
 特に分量の多い準備書面等では,冒頭の記述(最初の1~2頁)に注意が必要です。プレゼンや「お笑い」などでも,「つかみ」が大切だといわれます。準備書面等も同じで,冒頭(読み始め)で読み手を惹きつけなければ,最後まできちんと読んでもらうことを期待できません。さらに,同じ内容の文章であっても,冒頭で読み手を惹きつけたか否かによって,その後の文章の印象も変わってきます。それだけに冒頭の記述は大切になってきます。
 このようなことから,私は準備書面等を作成するにあたって,内容面はもちろん,形式面(読みやすさ)にも注意を払い,次の①ないし⑤の点に気をつけています。一言で例えるならば「幾何学的な美しい文章」を目指しています。ただし,①については,特に公用文の用字用語例を確認しながら準備書面等を作成しているわけではなく,感覚的に使い分けているので,部分的には公用文の用字用語例と異なっているかもしれませんが,凡そはこれに合致していると思います。
① 言葉遣い,送り仮名,漢字と平仮名の使い分け等は,公用文の用字用語例に従う。
② 文章はできるだけ簡潔にかつ短く,特に同じ内容の記述を繰り返さない。
③ ビジュアル的(パッと見)にも見やすい構成にし,準備書面等の分量(ページ数)が多くなるときは,目次を付ける。
④ 読みやすさという観点から,項目立てと項目の整理・配列を工夫する。
⑤ 準備書面等全体だけでなく,各項目でも,できるだけ冒頭でポイント(結論,言いたいこと)を示す。

もっとも,当事務所の準備書面等が実際に他人から見て読みやすいものになっているかというと,まだまだ反省すべき点が多々あるのではないかと思います。特に,当事務所弁護士が若手の頃に作成した古い準備書面等を読み返してみると,内容面以上に反省点が出てきます。
 皆さんも,準備書面等を読むにあたっては,このような形式面(読みやすさ)にも気をつけて,弁護士の起案能力を判断されればいいのではないかと思います。





 

フォームでお問合せ

PAGE TOP