2.あなたが相談・依頼しようとしている弁護士は信頼できますか? | 専門分野と弁護士費用の疑問に答えます
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2.あなたが相談・依頼しようとしている弁護士は信頼できますか?

2.あなたが相談・依頼しようとしている弁護士は信頼できますか?

① 弁護士は,相談者・依頼者に対する最低限の誠意として,正直な情報提供に努めるべきです。

相談者・依頼者が弁護士選びに失敗しないためには,弁護士側(売り手)と相談者・依頼者側(買い手)との間の法律や弁護士業界(弁護士の能力・実績等)に関する大きな情報格差を是正する必要があります。情報格差を完全に解消することは不可能ですが,弁護士側としては,できる限り情報格差の是正に努めるべきです。宣伝広告の目的は自己の商品やサービスを売り込んで集客することですが,誇大表示や相談者・依頼者側の選択を誤らせるような形での宣伝広告は,許されるべきではありません。

近年は,司法試験制度が大きく変わり,司法試験合格者も大増員されてきたことから,特に法科大学院(ロースクール)を卒業した新司法試験合格組の新人・若手弁護士の中には,就職先がないまま勤務弁護士として修業することもなく,いきなり独立して仕事もないという苦しい状況に立たされている方々も少なくありません。私自身も,修習期(第59期)で見れば,まだまだ若手の方に属すると思うのですが,近年の弁護士急増によって,弁護士数で見れば,いまや私より修習期が下(後輩)の弁護士(第60期~第70期)の方が多くなっているようです。そのため,新人・若手弁護士が十分な実務経験を積まないまま集客に走らなければならないということも理解できます。
 しかし,現在では,多くの弁護士がインターネットで宣伝広告をするようになり,それも同じように「〇〇専門」や「〇〇に強い弁護士」など裏付けのない謳い文句を挙げているため,差別化されず,これらの謳い文句の胡散臭さが相談者・依頼者側にも伝わり,それが選択基準にならなくなってきているのではないかと思います。
 このようなときこそ,弁護士側としても,他との差別化を図るという意味でも,相談者・依頼者側(顧客)の立場に立って,「顧客本位」という姿勢で情報格差の是正を図ったうえで,等身大の自分自身で誠意をもって自己アピールをすべきではないかと思います。そのような姿勢は,きっと相談者・依頼者側にも伝わって,その信頼を勝ち取り,相談者・依頼者側の利益だけでなく,長い目で見れば,その弁護士自身の利益にもつながるはずです。

② 新人・若手弁護士も,実務経験や実績が乏しいことを隠さず,等身大の自分自身をアピールすべきです。

新人・若手弁護士は,実務経験や実績という面では,どうしてもベテラン・中堅弁護士には敵いません。しかし,実務経験や実績が乏しいからといって,必ずしも,弁護士としての能力が劣り,依頼者にとって不利益な弁護士であるということにはなりません。

ベテラン・中堅弁護士であっても,弁護士としての能力が劣る人もいます。また,ベテラン・中堅ともなると,悪い意味で仕事に慣れきって,若い頃の志を忘れ,一つ一つの事件を真剣に取り組まなくなったり,受任した事件を新人・若手弁護士に丸投げしたりするというケースもあり得ます。一方で,新人・若手弁護士の中には,実務経験や実績という面では劣っていても,一つ一つの事件を真剣に取り組むことによって,このようなベテラン・中堅弁護士よりも良い結果を出している弁護士もいると思います。

弁護士の仕事は,一つ一つに個性があり,事件の性質や依頼者の事情に応じたオーダーメイドで,いわば職人のような手作業であるといえます。本来は,大量に集客して画一的・機械的に処理できるような仕事ではありません。したがって,一人の弁護士が真剣に取り組むことができる事件数には限界があります。
 新人・若手弁護士は,「相談実績〇〇件」や「解決実績〇〇件」などと謳って大量に集客している法律事務所,テレビ出演などに忙しい著名弁護士,安定した多数の顧問先・顧客等を抱えるベテラン弁護士などに比べて,一つ一つの事件を真剣に取り組む時間は十分にあると思います。それが新人・若手弁護士の強みであるともいえます。

一つ一つの事件を真剣に取り組むということは,依頼者にとって極めて重要なことですので,新人・若手弁護士はそこをアピールすべきです。それは「誠実さ」ということであり,「誠実さ」は,ホームページ上でも「顧客本位」の姿勢で等身大の自分自身をさらけ出すことによって,相手に伝わるのではないでしょうか。下手に実務経験や実績が乏しいことを隠そうとすれば,かえってホームページを見た方々に不信感を与えるのではないでしょうか。

相談者・依頼者の立場からすれば,弁護士を選ぶにあたって,ホームページ上にこのような「誠実さ」が表れているかどうかを見るべきであると思います。

③ その弁護士は弁護士登録年度(経験年数)を表示していますか?

実務経験が長ければ能力が高いとは必ずしもいえませんが,実務経験(少なくとも一定程度の実務経験を積んでいること)は,相談者・依頼者側が弁護士を選ぶ際の重要な判断要素の一つです。そうであれば,「顧客本位」という姿勢を持った弁護士なら,実務経験(経験年数)を隠すようなことはしないはずです。
 ベテラン弁護士の場合には,その他の経歴や実績などを見れば十分な実務経験があることが明らかであり,あえて弁護士登録年度(経験年数)を表示していないこともあります。そのような場合には問題ないのですが,学歴,司法試験の成績,大規模法律事務所や有名法律事務所の出身(実態としてはわずか数年在籍していただけにすぎない)などをアピールしていながら,弁護士登録年度(経験年数)の表示がない場合には要注意です。

もっとも,「大規模法律事務所」や「有名法律事務所」であるか否かはともかくとして,ある特定の分野について相談・依頼する場合には,その分野に精通した法律事務所(その意味では「有名法律事務所」)の出身であるか否かは,弁護士を選ぶ際の重要な判断要素の一つになる場合もあると思います。
 特に,一般的な法律事務所ではあまり取り扱っていない,特許その他知的財産権に関する事件,渉外事件,海事事件,比較的大型の企業法務や企業倒産(破産・民事再生),その他特殊な分野に属する事件については,その分野に精通した法律事務所で実務経験を積んだこと自体が,他の一般的な法律事務所では経験できない貴重な実績となります(ただし,その法律事務所にわずか数年在籍していただけであれば,あまり役に立つ実績とはいえないかもしれません)。ここで注意していただきたいのは,「その分野に精通した法律事務所」とは,テレビCMなどでよく見かける法律事務所ではありませんし,必ずしも「大規模法律事務所」や「有名法律事務所」というわけでもないということです。

④ その法律事務所の所属弁護士は新人・若手弁護士ばかりではありませんか?

最近では,弁護士登録後数年以内の新人・若手弁護士が,就職先もなく経費節約のために共同で法律事務所を開設したり,資金力と経営手腕に長けた若手弁護士が,登録したばかりの新人弁護士を数人雇って(あるいは間貸しして)法律事務所を経営したりするケースが増えているようです。このような法律事務所は,長年の実務経験を通じた顧客や人脈から依頼者を紹介してもらうことは期待できませんから,宣伝広告による集客に力を入れざるを得ません。そのため,立派なホームページを開設している事務所が多いようです。

とりあえず,ホームページ上で弁護士の経歴を確認してみてください。経歴の中に弁護士登録年度(経験年数)が表示されていないケースが意外と多いことに気づくのではないでしょうか。
 弁護士登録年度(経験年数)が表示されていないからといって,必ずしもその弁護士が実務経験の浅い新人・若手弁護士であるとは限りません。しかし,新人・若手弁護士に限って,弁護士登録年度(経験年数)を表示していないケースが多い傾向にあると思われます。

弁護士登録年度(経験年数)については,日本弁護士連合会(日弁連)のホームページで「弁護士をさがす」から検索して,その弁護士の登録番号を確認すればおおよその見当がつきます。弁護士の登録番号と登録年度との関係については,どなたかが「弁護士の登録番号と修習期の早見表」というものをネット上で公開していましたので,それを見れば参考になると思います。

⑤ あなたの事件を担当する弁護士の顔は見えていますか?

あなたは,多数の弁護士が所属することに安心感や信頼感を抱いて,その法律事務所を選ぼうとしていませんか?

しかし,その法律事務所にどれだけ多くの弁護士が所属していたとしても,実際にあなたの事件を担当する弁護士は1人(多くても数人)で,その他大勢の弁護士はあなたの事件に全く関与しないでしょう。弁護士の仕事は,大企業などの大型案件でもない限り,基本的に個々の弁護士に委ねられた個人的な作業であり,事件解決の良し悪しは担当弁護士の手腕にかかっています。その法律事務所に所属する多数の弁護士が一丸となってあなたの事件を解決してくれるわけではありません。

法律事務所のホームページを見ると,多数の弁護士が所属しているにもかかわらず,ベテラン・中堅弁護士が1人ないし少数しか所属していないという法律事務所をよく見かけます。最近では,代表弁護士でさえ新人・若手弁護士で,多数の新人・若手弁護士を雇っている(間貸ししている)という法律事務所も多数存在します。
 このような法律事務所に事件を依頼した場合,その法律事務所に所属する多数の弁護士の中で,誰があなたの事件を担当することになるでしょうか。未熟な新人弁護士や若手弁護士が担当する可能性はないでしょうか。あなたの事件を担当する弁護士の顔は見えていますか?

仮に新人・若手弁護士があなたの事件を担当することになったとしても,その法律事務所に所属するベテラン・中堅弁護士がきちんと指導・監督してくれれば,ある程度は安心できるかもしれません。しかし,実際には,ベテラン・中堅弁護士自身も自らの事件を多数抱えているため,新人・若手弁護士に対し十分な指導・監督をすることは困難であると思います。
 ましてや,多数の弁護士が所属しているにもかかわらず,ベテラン・中堅弁護士が1人ないし少数しか所属していないという法律事務所の場合に,1人ないし少数のベテラン・中堅弁護士が多数の新人・若手弁護士を十分に指導・監督することができるのでしょうか。
 新人・若手弁護士だけで構成され,ベテラン・中堅弁護士がいない法律事務所であればなおさらです。

また,「弁護士会,法テラス(日本司法支援センター),市区町村などが運営する法律相談であれば安心」と考えている方も少なくないのではないかと思います。しかし,これらの法律相談では,その地域の弁護士であれば誰でも登録して担当者となることができます。弁護士会,法テラス,市区町村が,有能な弁護士を選んで担当者にしているわけではなく,個々の法律相談や事件処理について責任を負ってくれるわけでもありません。さらに,相談者側で担当弁護士を選べるわけでもありませんので,どんな弁護士があなたの法律相談の担当者になるのかは分かりません。
 ただ,弁護士会や法テラスの法律相談を経由して受任した事件については,それぞれ報酬基準が定められています(場合によっては受任審査もあります)ので,「基準額を超えた弁護士報酬を取られる心配はない」という意味では多少安心できるかもしれません(もっとも,弁護士会の報酬基準は必ずしも低額に定められているわけではありません)。
 弁護士会,法テラス,市区町村の法律相談を申し込むにあたっては,漠然と「弁護士会だから安心」,「法テラスだから安心」と思い込まず,これらの点も踏まえておいてください。

⑥ その弁護士・法律事務所の「実績」,「解決事例」の表示には裏付けがありますか?

弁護士を選ぶ際に弁護士の「能力」は最も重要な判断基準ですが,「能力」は目に見えません。そこで,弁護士の実績や解決事例が弁護士の「能力」を推し量る重要な判断要素になるといえます。しかし,ホームページ上の「相談実績〇〇件」,「解決実績〇〇件」,「〇〇を解決しました」など,何の裏付けもない抽象的な「実績」や「解決事例」の表示をそのまま鵜呑みにすることはできません。

あなたが相談・依頼しようとしている弁護士の「実績」や「解決事例」には,きちんとした客観的・具体的な裏付けがありますか?

仮に裏付けがあったとしても,多数の弁護士が所属する法律事務所の場合,それは法律事務所全体としての実績にすぎず,実際にあなたの事件を担当する弁護士にどのくらいの実績があるのかは不明です。同じ法律事務所に所属する他の弁護士の実績は,あなたにとって何の関係もありません。

また,債務整理,交通事故,相続,離婚,刑事事件など,特に専門性が高くなく,いわば「ありふれた事件」の「実績」は,一定の実務経験を積んだ弁護士であれば当然といえる程度の実績にすぎません。その程度の実績であれば,あえて「自らの実績」としてホームページに載せない弁護士も多いことでしょう。したがって,そのような「実績」が弁護士の評価を高める事情になるとも思えません。

あなたが相談・依頼しようとしている弁護士の「実績」や「解決事例」は,「他の弁護士ではなくその弁護士を選ぶ理由」となる「差別化された実績」ですか?

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